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2022年度ARENA-PAC報告書

本レポートは2022年度WIDEプロジェクト報告書からの抜粋です。

1. はじめに

本稿では、アジア太平洋地域の研究教育目的広帯域バックボーンネットワークであるARENA-PAC (Arterial Research and Educational Network in Asia-Pacific, https://www.arena-pac.net/) の運用について報告する。ARENA-PACは、アジア太平洋地域のインターネットの発展のための基金であるAsia Pacific Internet Development Trust (APIDT) により長期使用契約された海底ケーブル網による研究教育目的の広帯域バックボーンネットワークである。ARENA-PACは、APIDTにより長期使用契約された海底ケーブル網に加えて、他の研究教育ネットワークとの相互接続などにより、ARENA-PACの名前が示すようにアジア太平洋地域に広がる「動脈 (Artery)」とも言える広域大容量バックボーンネットワークを目指している。本稿では、2021年2月に運用を開始した東京–グアム間の100 Gbpsの通信帯域の回線をはじめ、現在の運用状況および今後の拡張計画、国際的な連携協力について報告する。

2. ARENA-PACの運用状況および拡張計画

2023年1月末時点では、ARENA-PACは以下の2回線を運用している。

  • 東京–グアム 100 Gbps回線
  • グアム–シンガポール 100 Gbps回線(Guam-SG Connectivity Consortium: ARENA-PAC, AARNet, Internet2, IN@IUのコンソーシアムによる共同回線)

また、2023年には、以下の2回線の運用開始を目指して準備を進めている。

  • グアム–マラン(インドネシア) 100 Gbps回線
  • グアム–ケソン(フィリピン) 100 Gbps回線

さらに、衛星通信技術を用いたアジア太平洋地域への教育コンテンツ配信や災害時のインターネットアクセス技術を開発・運用・提供してきたAI3/SOI-ASIAプロジェクトとの連携により、東ティモール国立大学へのインターネット接続とVPNによる REN (AI3) への接続準備を進めている。

図 1 ARENA-PACのバックボーンネットワーク構想

図1に、これらの運用開始済みの回線および今後の拡張計画をARENA-PACのバックボーンネットワーク構想としてまとめた。この図に示すように、ARENA-PACはアジア太平洋地域に研究教育目的の広帯域バックボーンネットワークを構築し、他の研究教育ネットワーク運用組織との相互接続・連携により、国際的な研究教育活動を支援していく計画である。

図2 ネットワーク構成図(灰色塗りつぶしは準備中)

図2にARENA-PACのネットワーク構成図を示す。今年度は、2021年より調達中であった図2に示したARENA-PAC用機材が納品されたため、2022年10月から12月にかけて図2の構成のとおり整備した。ただし、灰色で塗りつぶした機材は、現在輸送手続き中であり、2023年に展開する予定である。

3. 今年度の活動報告

以下に、ARENA-PACにおける今年度のイベントを具体的に報告する。

3.1. インドネシア・フィリピンとのMoU締結

ARENA-PACは、インドネシアおよびフィリピンへの展開に先立ち連携先機関とMoUの締結をおこなった。

2022年8月31日にインドネシア・バリにおいて、インドネシアの研究教育ネットワークであるIDRENおよびARENA-PACのインドネシア側端点となるブラウィジャヤ大学とMoUの締結をおこなった。MoU締結式には、インドネシアのジョニー・G・プレート通信情報技術大臣、河野太郎デジタル庁長官、柘植芳文総務副大臣に陪席いただいた。

また、2022年11月15日にフィリピン・ケソンシティにおいて、フィリピン科学技術省(DOST)、フィリピンの研究教育ネットワークであるフィリピン研究・教育・政府情報ネットワーク(PREGINET)と、それぞれMoUを締結した。DOSTとのMoUでは、DOSTのレナト・ソリダム・ジュニア長官がMoUに署名をした。

これによりARENA-PACは、現地の研究教育ネットワークの支援を受けながら回線の開通を進めることができる。同時に、各拠点における回線開通時のサポート、および、運用を現地の研究教育ネットワークと連携をしながら進める体制が整った。ARENA-PACはアジア太平洋地域の広範に展開する研究教育ネットワークである。そのため、ARENA-PACの運用においては、現地の運用の支援が不可欠である。

3.2. インドネシア回線の契約締結

ARENA-PACは、グアム-マラン(インドネシア)間の100Gbps回線について、回線事業者と契約を締結した。

2022年8月31日にインドネシア・バリにおいて、APIDT-IとTelkom Indonesiaは、両者間でグアム-マラン間の100Gbps回線の利用契約を締結した。回線の物理開通は2022年11月中に完了し、回線事業者による試験結果を元に2023年にARENA-PACへの引き渡しが完了する予定である。

これによりARENA-PACは、東京、グアムに次ぐ第三の拠点となるマラン、そしてインドネシアとの接続に向けて大きく前進した。

3.3. 国内RENとのMoU締結

2022年10月7日にARENA-PACは、国内各RENとの連携を強化するため、以下の四者によるMoUを締結した。

  • 国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)
  • 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所 (NII)
  • 農林水産省農林水産技術会議事務局 (MAFFIN)
  • WIDEプロジェクト

これにより、MoU当事者の研究開発教育ネットワーク間およびこれらと接続する外部の研究開発教育ネットワークとの間のトラフィック交換が円滑に推進かつ効果的に実施されることとなった。特に海外との接続においては、四者間での連携によってアジア太平洋地域の研究開発教育ネットワークの展開がより促進することが期待される。本連携は、Coalition of Interoperable Networks for Japan International (CINJI)として今後の連携を強化していく。

3.4. SC22における実験への協力

ARENA-PACは、SC22 (The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage, and Analysis)において、APOnetメンバーとともに広帯域トラフィック伝送のデモンストレーションを実施した。本デモンストレーションは、情報通信研究機構(NICT)総合テストベッド推進センターが中心となり、日本と米国テキサス州ダラスの間でおよそ500Gbpsにせまるトラフィックを伝送する物である。APOnetメンバーによって、図3に示すように6系統のLayer 2によるパスが構成され、各パスに80Gbps程度のトラフィックが伝送された。ARENA-PACでは、そのうちの1パスの一部を構成しており、デモンストレーション中には80Gbps程度のトラフィックが流れていることが確認された(図4)。

本デモンストレーションは、SC22においてSCinetスピリット・オブ・イノベーション・アワードをAPOnetメンバーとして受賞し、ARENA-PACにも記念の盾が授与された。

ARENA-PACは、APOnetをはじめ様々な連携の枠組みを通じて、多様な研究教育活動に資するネットワークとして展開を続けていくとともに、各研究教育ネットワークとの連携を強化していく。

図3: NICT実験資料より引用

図4 ARENA-PAC東京・グアム回線でのトラフィック量のグラフ

4. まとめ

本稿ではアジア太平洋地域の研究教育目的広帯域バックボーンであるARENA-PACの運用について報告した。WIDE Projectは、今後もARENA-PACの運用やAPOnetをはじめとした各種の連携を通じて国際的なインターネットの発展に継続して貢献していく。

Excerpts from the WIDE Project Report 2022