2025年8月14日、アジア太平洋地域の研究教育ネットワークARENA-PAC(WIDE Projectにより運用)は、マレーシア科学大学(USM)とともに、ペナン(マレーシア)-シンガポール間のリンク開通を発表し、マレーシアの研究教育コミュニティにおける影響と協力の可能性を位置付けるものとなりました。
この接続は、2024年9月17日にARENA-PACとUSMの間で締結された覚書(MoU)に基づき実現されたもので、ARENA-PACネットワークは、USMをシンガポールおよびグアムのグローバルな研究教育ネットワーク(REN)ハブを経由して東京などの拠点と接続しています。
この高速接続の確立により、国際的な研究協力、資源共有、重要なサービスの提供が飛躍的に強化されるだけでなく、グローバルなオープンサイエンスの推進に向けた強力な原動力となることが期待されています。
開通式はUSMのエウレカ・コンプレックスにて開催され、ARENA-PACおよび慶應義塾大学の村井純教授が式典を主宰しました。USM副学長のDato’ Seri Ir. Dr. Abdul Rahman Mohamed教授をはじめ、マレーシア国内外の著名な学術関係者が出席しました。
副学長は「この超高速ネットワークにより、USMの研究者は気候科学、医学、工学などの分野で、世界中のパートナーとより効率的かつダイナミックな協力が可能になります。これは、社会全体に貢献する高インパクトな研究を推進する大きなチャンスです」と述べました。
また、プロジェクトの実現に貢献したARENA-PAC、APNIC、Cisco、Juniper Networks、USM School of Computer Sciences and Digital Transformation Centreチームに感謝の意を表しました。
開通式では、村井教授による基調講演「研究教育ネットワークの役割」が行われました。講演では、1995年のインターネット黎明期を振り返り、当時は世界人口の1%未満しか接続されていなかったことが紹介されました。そして、村井教授は、Googleなどハイパースケーラーの成功は、オープンな技術標準と共有資源モデルによって分散型の投資が可能となり、イノベーションが加速されたことにあると強調しました。
また、村井教授は、インターネットが中央集権的な管理を持たない、分散型・自律型のシステムであることが、グローバルで強靭な特性を生み出していると述べ、「このアプローチは、世界中の機関をつなぐ研究ネットワークを構築するARENA-PACの精神を体現しています」と語りました。
技術プレゼンテーションでは、USMのDr. Yung-Wey Chong氏とWei-Hong Bok氏、ARENA-PAC/WIDEプロジェクトのDr. Hirochika “Panda” Asai氏が、ARENA-PACの100Gbps接続を活用したデモンストレーションを紹介しました。複数のARENA-PAC拠点から同時に大規模な研究データをダウンロードし、回線監視システムの実演も行いました。
また、以下の機関による多国間による研究教育協力のプレゼンテーションも行われました:
- 分散型SOC対応:リアルタイムのサイバー攻撃検出と共同対処 (インドネシア・ブラウィジャヤ大学 Dr. Achmad Basuki氏、USM Dr. Shankar Karuppayah氏)
- ARENA-PACリンクによるデータとコンテンツの融合 (フィリピン・DOST先端科学技術研究所 (ASTI) Dr. Franz A. de Leon氏)
- 大学と産業界のためのARENA-PACコラボレーションスペース (慶應義塾大学 村上陽子氏)
ARENA-PACの開通により、USMは包括的で革新的かつ高インパクトなグローバル研究エコシステムの構築に向けたリーダーシップを改めて示しました。
このネットワークは、大学の評価を高めるだけでなく、社会と世界全体に有益な成果をもたらす触媒となることが期待されています。
イベントの概要はこちらからご覧いただけます:
https://youtu.be/d29oOazJ5OY?feature=shared